船越 弘幸という選手がいる。
彼は”耳が聴こえない”というハンディキャップを抱えながらも、関西リーグ2部のジプシーフットサルクラブ、そしてデフサッカー・フットサル日本代表としても精力的に活動を続けている。
カテゴリに囚われることなく高いレベルでのプレーを継続し、自身を追い込みながらも挑戦を続けている船越選手に、フットサルに出会った頃からの話、プレーに込められている想いを聞いた。
船越選手は今、関西リーグ試合中の負傷により病院にて治療を続けている。
今季は絶望的と言われながらも前を向き、再び歩みだそうとしている船越選手の力強さを、ぜひご覧頂きたい。
ーーまず差し支えなければ、耳が聞こえないことについて、教えて頂けますか?
自分の耳は1歳の時おたふく風邪で失聴してしまい、耳元でスピーカー大で大きな声出してやっと僅かに聴こえるくらいの聴力です。
でも補聴器という器具をはめてやっと音が聴こえる状態になります。といっても拾えるのは音であって言葉ではありません。
すなわち耳で会話を聞き取るのはできません。
目で口元の動きを見て、耳に入った音を拾って初めて会話がわかるといった感じです。
早口だったり、口元が小さかったりしたら会話は読み取れません。
一番わかりやすいイメージとしては、ヘッドホンして完全に無音状態にして人と話してみてください。
健聴者だと会話できないけど、僕らはそれができるのです。
目で口元の動きを見る口読術のおかげで、人の倍は観察能力が長けていると思います。
試合中は後ろからの声は聞こえたり聞こえなかったりするし、聞こえたとしても、どこから発してるのか?何を話してるのか?はわかりません。
ーーフットサルを始めたきっかけは、何だったんですか?
「※上村信之介さんのプレーに衝撃受けたからです。
サッカーしかやってなかった頃、フットサルマガジンピヴォを見て、なんだこのチャラいひとはというのが最初の印象でした(笑)
ある時、信之介さんが大阪に来て、僕のチームと試合をしてくれたんです。
その時、もう訳の分からないすごいプレーをされて…。楽しい、フットサルのプレーを教えてくれました。そこから、フットサルにのめり込みましたね」
※元フットサル日本代表、現関東2部FUTURO。ミスターフットサルと呼ばれ、フットサル黎明期から、競技を最前線で引っ張ってきた選手。
ーーそこから、どんな魅力をフットサルに感じる様になったんでしょうか。
「一瞬の駆け引き、サッカーとは比べものにならないスピーディーな展開ですね。
サッカーは45分ハーフで、実際ボールを触っている時間と言えば、3分程でしょう。
それに比べて、フットサルはしんどい。常に動き続けるスポーツで、かつボールに触る機会もとても多い。それが大きいと思います。
あとは、自分にSだから。自分をおいこむのが好きなんです。追い込めば追い込むほどがんばれるんですよね」
ーーそして現在は、関西2部のジプシーフットサルクラブに所属しています。入団の経緯を教えてください。
「FUTSAL PIXさんが掲載していたセレクションの記事を見て、セレクションに参加しました。それに合格して、現在ジプシーでプレーしています。古豪であり勤勉で意識高いチームというのは前から知ってたし、自分の性格に合ってると思ったから受けました。
実際入団してみて、まさにその通り個々の意識が高くてやることは細くて、そして皆厳しく且つ親切でした。
ジプシーは個性的なキャラの選手ばかりですが、本当に親切な人たちです。
会話でのコミュニケーションには限界があるので、コーチであるガン(岩野選手)は練習、もしくは練習試合、公式戦後、自分が修正すべきプレーがあったらわざわざビデオ検証して、気になったシーンを携帯の動画で撮って説明文付きで僕に送ってくれます。
そして細かく自分との質疑応答に対応してくれてます。
コーナーやキックイン、セットプレーの番号言ったり、ディフェンスの形の指示は、もちろん口で、声で行われるのですが、僕は試合中聞き取れないので、ゴウ(高田選手)や、ジミー(大西選手)など、チームメイトがジェスチャーで僕に伝えてくれてるし、皆は僕のためにサインプレーの合図を指文字で作ってくれたりしてます。
僕がチーム最年長なんですが、皆は僕を歳上だからと遠慮せずにハッキリ発言してくれてるので、すごくありがたいです。今まで色んなチームを渡り歩いてきたんですが、そこまで細かくしてくれるのはジプシーが初めてです」
ーー素晴らしいチームですね。
「そうですね。あとは、FUTSAL PIXさんが作ったジプシーのセレクション実施のサイトを見て、ジプシーのセレクションを受けて合格入団。こうやって今FUTSAL PIXさんから取材受けてるし、僕とFUTSAL PIXさんは不思議な縁があるなぁ~と感じています(笑)」
ーー本当ですね! (笑)チームメイトとのコミュニケーションで、意識していること、努力していることはありますか?
「プレー中は会話でコミュニケーション擦り合わせるのが難しいので、アウトプレーや休憩時に積極的にコミュニケーションとるようにしてます。
わからないことや疑問は絶対抱えないで、その都度に納得いくまで話しするようにして。気になったことや、ミーティングで会話わからなかったことは個人的にメールで聞くようにしていますね!」